決算特別委員会 令和3年10月01日(企画総務)

2021/10/01

質問項目

 

財政について

中里光夫 委員

 では、私からは財政について質問します。

 コロナ禍で非正規雇用で働く人たちの仕事が奪われ、まともな保障のないままの自粛要請が、飲食をはじめとした中小企業、個人事業主、文化芸術、イベント関係者を追い詰めていると。八月に出された区内経済状況についてを見ましても、区内の小売業、昨年十―十二月の業績、マイナス六一・四ポイント、大変大きな打撃を受けています。

 今年初めに私たち区議団でアンケートを行って、生活が苦しいという方が五〇%を超えていると。また最近は、デパートの催し物の仕事をしてきたけれども、仕事がなくなって、住宅確保給付金などを利用してきたがもう先が見えない。こういう相談も寄せられ、生活保護の申請をする例なども増えてきています。区民や中小事業者の暮らしを守るための必要性が増していると。一方、この間、ネウボラなどの子育て支援の展開や保育や介護の需要増に応えた施設の整備、児童相談所の開設など、区が行う事業は拡大をしてきました。

 区の財政には限りがあります。財政運営では、一つとして、国などから財源を獲得する努力、二つとして、区として何を優先し選択するのか、方針を明確にする中で、財源を生み出す努力と工夫が必要です。コロナ禍から区民生活を最優先に守っていく財政運営を求めて質問していきたいと思います。

 決算が示されました。基金残高は過去最高一千百十九億円、令和二年度の実質収支は百三十九億円、今年度の繰越財源として確定しました。第三次補正予算で庁舎等整備建設等基金へ五十億円の積み増しをしたと。特別区債発行の抑制を図るためと区は説明していますが、そもそも区民生活に影響を与えない庁舎整備の財政計画と言ってきました。さらに余裕を持たせるための積み増しができるほど、現在の財政は健全だということです。区財政の現状についての基本認識を伺います。

五十嵐 財政課長

 令和二年度決算におきます区の財政状況は、実質収支は前年度から四十一億円増の百三十九億円となりまして、財政健全化法による健全化判断比率も四つの項目でいずれも適正の範囲内となっております。また、令和二年度末時点での基金残高は一千百十九億円、前年度から五十八億円増となりまして、このうち財政調整基金の残高は三百八十一億円ということで、いずれも過去最高額となったところでございます。

 一方、見方を変えまして、財政調整基金残高の当初予算規模に対する割合という視点で見ますと、この割合は世田谷区の場合一二%となっておりまして、これは二十三区中十九番目という低さでありまして、余裕のある状況とは言えないと認識しています。また、一方で、単年度の財政指標や基金残高を見ますと、区の財政状況は健全の範囲内だと言えるという認識でございます。

中里光夫 委員

 現状は、財政は健全だと、お金はあるということです。しかし、区は中期財政見通しや財政シミュレーションで、実際に実態に合った見せ方や説明が不十分だと言えると思います。

 公共施設等総合管理計画一部改定案が出されていますが、区債残高、償還額、基金残高の再シミュレーションが示され、基金は来年度から減り続け、令和十六年頃からは、区債残高は一千四百億円程度で高止まりするという予測が出されています。貯金は減り、借金が増えて大変だと危機をあおるようなシミュレーションだと言えると思います。

 しかし、区債残高一千四百億円は、一年前に出てきた資料、総合計画管理一部改定素案には、区の財政規模を踏まえれば過度な特別区債残高ではないというふうに記載されていますが、まさにそういう金額です。また、これまで繰り返されたシミュレーションはいつも次の年から基金は減る見通しが示されている。しかし、実際には、年度末に予算の使い残しを基金に積み上げて、毎年毎年最高を更新している。毎年積み増ししているのに、その実態を反映しているシミュレーションになっていない。実態に合わせた財政の見通しの改善、そして区民説明を守ることの徹底を求めますが、見解を伺います。

五十嵐 財政課長

 委員お話しの公共施設等総合管理計画一部改定案におきましては、重点方針等により経費の抑制を図ったものの、中期財政見通しの更新におきまして、特別区税の今後の見通しは不透明であることから令和三年度と同額で見込んだことなどによりまして、財政見通しを踏まえた特別区債残高及び基金残高の再シミュレーション結果として、令和二十八年度の特別区債残高が一千四百七十六億円、基金残高が三百二十一億円となってございます。

 こうした長期的な見通しにつきましては、令和六年度に予定している先ほどの計画の本改定に向けた検討の中で財政見通しを踏まえ、区債残高、基金残高のシミュレーションも更新してまいります。

 中期的な区債残高、基金残高のシミュレーションにつきましては、毎年一月に予算案に基づく更新を行い八月に決算と翌年度予算フレームを踏まえた時点修正を行っているところです。今後も地域経済の動向、あるいは区の財政需要など、その時点時点における区財政の影響を見極めながら適宜更新し、お示ししてまいります。

中里光夫 委員

 適時更新しながら、細かく見直しもこれまでもやってきましたけれども、やはりそのたびに、基金の額で言えば、次の年から下がるというのが示されて、現状は上がりましたというのがずっと繰り返されてきた。やはりこの実態をきちんと区民に説明する必要があるということを指摘しておきたいと思います。

 区政運営は何よりコロナから区民の命と暮らしを守ることを最優先とする必要があります。困窮世帯への支援に踏み出したことを評価します。また、ワクチンや大規模検査、保健所や医療の体制強化など感染対策、区民や事業者の暮らしと営業を支える支援、さらに医療や介護、子育て、障害者福祉など、コロナ後を見据えたケアを支える区政の推進、気候危機打破、持続可能な社会のための取組を進めることです。

 ふるさと納税など国の不合理な税制改正をただして、国の姿勢を変えさせ、財源を確保することも必要だと思います。区民の命と暮らしを最優先にする区政運営、財政運営が必要です。区財政の運営で何が重要で、どのような選択をするのか、副区長の答弁を求めます。

中村 副区長

 区財政の運営についてです。

 区ではこの間、コロナ禍における厳しい財政状況の中、事務事業の見直しや補正予算と組み合わせた複数年による予算の対応など様々な工夫を凝らすとともに、国や都の財源を最大限に活用し、PCR検査体制の確立や医療機関への支援、生活困窮世帯や子育て世帯への支援、区内事業者の事業継続のための支援など、区民生活の安全と安心を守り抜くことを最優先に区独自の施策を行ってきたところです。

 感染症の影響による大幅な減収に加え、ふるさと納税による七十億円もの税源流出が見込まれる中にあっても、区は感染拡大防止対策と区民生活支援、社会経済活動の両立を図りながら、区民サービスを維持していく責務があると考えます。

 区政運営に当たりましては、引き続き、不合理な税制改正に対し声を上げて、地方税財源の充実強化、また、地方創生臨時交付金の継続など、必要な財政措置を国や都に求めてまいります。また、公的責任、参加と協働を踏まえた行政経営改革の取組を一層推進し、必要な財源の確保に努めながら、現在策定中の未来つながるプランに掲げます四つ柱の取組を着実に進めて、区民に身近な区として、区民の生活や事業者の活動を支えてまいりたいと考えます。

中里光夫 委員

 区民の命や暮らしを支える、それは本当に最優先に進めていただきたいと思います。

未来つながるプラン素案について

中里光夫 委員

 では次に、未来つながるプラン素案が出されていますが、それについての質問です。

 区民の暮らしや福祉最優先の区政の発展を求め、このつながるプランの行政経営改革について、まず伺います。

 今実行している新実施計画では、自治の推進と独自性のある自治体経営の確立に向け、低所得者への配慮の観点を踏まえ、区民の視点に立った改革を着実に推進する、こういう記述があります。そして、その方針の第一に、区民に信頼される行政経営改革の推進を掲げています。そして、その推進のために、視点二として、自治の推進と情報公開、区民参加の促進があります。

 しかし、このつながるプランでは、この位置づけが大変弱く、新実施計画の前進面を踏襲した行政経営改革の明記が必要だと考えますが、見解を伺います。

髙井 経営改革・官民連携担当課長

 区はこれまで、公正性、公平性や成果に基づく評価の観点とともに、低所得者等への配慮の観点を踏まえ、区民の視点に立った行政経営改革を進めてまいりました。昨年度、全庁を挙げて実施いたしました施策事業の本質的な見直しにおきましても、区民、利用者の視点に立って、様々な角度から一つ一つ丁寧に検証を行い、コロナ禍で苦境に立つ区民生活への影響を見定めながら取り組んできたところでございます。

 未来つながるプランにおきましても、引き続きこれまでの考え方を堅持するとともに、区民サービスの向上や参加と協働による地域行政の深化を進め、さらには自治の推進と情報公開、区民参加の促進をこれまでと変わらず基礎におきまして、区民に信頼される行政経営改革を推進し、持続可能な区政運営の確立を目指していくというふうに考えております。

中里光夫 委員

 自治の推進と情報公開、区民参加の促進をこれまでと変わらず基礎に置いて進めていくということですから、この計画の中にしっかり書き込んでいただきたいということを求めていきたいと思います。

 次に、行政経営改革は、区民に信頼される区政運営への改革が目的です。公会計制度の運用も始まりましたが、これは単なるコストカットの道具ではありません。公会計制度については、さきの一般質問で、費用対効果のみでは評価できない事業の効用なども見極め、行政経営改革に取り組む必要があるという答弁もありました。つながるプランにしっかりと記述するべきだと考えますが、いかがでしょうか。

髙井 経営改革・官民連携担当課長

 事業の評価検証に当たりましては、成果の達成状況や新公会計制度に基づくフルコストなど客観的な手法に基づく分析とともに、社会状況や区民ニーズを踏まえた事業の意義や効果など、数字で表すことのできない定性的な視点を併せ、総合的に評価検証を行うことが重要であると認識しております。これらのどちらかに偏重することなく、両方のバランスをしっかり取って事業の本質や在り方を見定めていく必要がございます。

 未来つながるプランにおきましても、この考え方を堅持いたしまして、今後の案をまとめる段階にて明記してまいります。

中里光夫 委員

 しっかりと書き込んでいただきたいと思います。

 また、つながるプランの行政経営改革の取組に、民間活用と官民連携によるサービス向上とコスト縮減というところで、図書館運営と区立図書館の在り方という明記がされています。図書館は、この視点六の民間活用と官民連携によるサービス向上とコスト縮減に位置づけられているんですが、確かに図書館の民間活用は今後の図書館運営の柱の一つだということです。

 しかし、昨日、区長に共産党の質問で確認したとおり、次の行動計画で、区立図書館の民間活用は、運営面での長所や短所も十分に検討していくということをおっしゃっています。一方では評価検証をこれから行う、一方では行政経営改革で民間活用に位置づけられている。これは矛盾するんではないでしょうか、伺います。

髙井 経営改革・官民連携担当課長

 区立図書館についてでございますけれども、世田谷区立図書館運営体制あり方検討委員会での検討プロセスで、区民や専門家の意見を反映させまして、民間のノウハウや創意工夫によりまして利用者に対するサービスや利便性の向上が期待されることから、施設の設置者としての公的責任の下、今回新たに地域図書館二館に、モデル的に指定管理者制度の導入を進めており、指定管理運営の中で評価などをしていくこととしているところでございます。

 これらを踏まえて、未来につながるプランにおいても、引き続き視点の六、民間活用や官民連携によるサービス向上とコスト縮減に位置づけております。

中里光夫 委員

 モデル的に進めるというような話ですけれども、やはりこういった項目、検討すると一方で言っていて、一方で民営化推進、行革計画に乗っかっているというのは矛盾していると。これはこの項目に載せるべきではないということを指摘しておきます。

 また、区立保育園の今後の在り方も、行政経営改革の視点七、施策事業の効率化と質の向上に位置づけられています。区立保育園は保育の質のスタンダードであり、保育の質を守るための役割、セーフティーネットとしての役割の充実など議論をされてきました。こういった区の責任を果たすためということで議論されてきた問題を、そもそも行政経営改革のテーマにすること自体がなじまないということを指摘しておきたいと思います。

つながるプラン、住民自治、民主主義の観点について

中里光夫 委員

 次に、つながるプラン、住民自治、民主主義の観点についてです。

 保坂区長は、これまで参加と協働を掲げてきました。それは、主権者である区民が地域の主人公として、区政や地域の問題に関わっていく、区はその前提となる情報公開を進めることや、住民自治の推進に努力してきた。そして、新実施計画では、重点政策の中で豊かなコミュニティー活動の発展と住民自治の推進ということが位置づいていました。ところが、つながるプランの四つの柱からは、住民自治の推進の言葉が消えているんです。

 地域行政推進の施策の方向性にも、様々な区民が地域の担い手として一層関わっていく地域社会を目指しますとあって、これは住民を地域の担い手としてのみ見る見方になっているんじゃないか。この間の地域行政推進条例の検討状況でも、地区や地域協議会の仕組みの記述もなくなっている。区は、住民は意見を出して、地域の担い手として参加すればよい、決めるのは行政だ。そんな姿勢になってはいないか。そうであれば、これはまさに民主主義の後退だと言えると思います。DXでは、参加と協働のRe・Designとありますけれども、参加と協働の性格まで変えてしまうんじゃないかと大変心配しています。

 つながるプランで民主主義を守り発展させる姿勢、情報公開と住民参加、住民自治を推進する、これをきちんと書き込むべきだと思いますが、見解を伺います。

松本 政策企画課長

 四つの政策の柱に位置づける施策につきましては、基本的に令和四年度、五年度に重点的に取り組む必要がある組織横断的連携や、区民事業者等との参加と協働により推進するものを考えており、参加と協働は全ての施策の土台となっていると認識しております。

 未来つながるプランでは、四つの政策の柱に基づく施策として地域行政の推進を位置づけ、また行政経営改革の十の視点においても、自治の推進と情報公開、区民参加の促進を掲げております。参加と協働をさらに発展させていくためには、区民が主体となって区政や地域の課題に関わっていける住民自治の推進を図ることを目指し、あわせて、区民への情報公開、情報提供の充実を図るとともに、区民参加の機会を多様化していくことが不可欠であると考えております。

 引き続き、参加と協働による取組を一層推進していくとともに、今後、デジタル技術の活用により、参加と協働のさらなる多様化を実現していきたいと考えております。

中里光夫 委員

 重要である、位置づけているというのであれば、しっかり書き込んでいただきたいと思います。

 最後に、高齢者介護の基盤整備の位置づけがなくなっていると。新実施計画では、一体的な提供体制の構築、高齢者の暮らしを支える、介護基盤の整備が位置づいていました。ところが、このプランではその記述が消えています。しっかり書き込むべきと思いますがいかがでしょうか。

松本 政策企画課長

 こちらについては分野別計画のほうで進行管理をしておりますので、一覧としてプラン上ではお示ししてまいります。

中里光夫 委員

 重要な問題です。

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